毎年この時期、国税の調査部門の方針が少しずつ聞こえてきます。今年は10月上旬に全国国税局の調査査察部長会議が開かれ、「リスク・ベース・アプローチ」を基本にすることが改めて確認されたと報じられました。
言葉は難しく聞こえますが、意味はシンプルです。「調査の人手には限りがあるので、問題がありそうなところに集中する」ということです。
重点とされた4つの分野
報道によると、重点分野として挙げられたのは次の4つです。
- 租税回避(制度の隙間を使って税負担を減らす取引)
- 海外への所得移転(海外の関連会社との取引価格などを通じた、利益の移転)
- 不正計算(売上除外や架空経費など、いわゆる「仮装・隠ぺい」)
- 消費税(不正還付や、インボイス制度にかかわる誤り)
どれも、私が特別調査班にいた頃から重く見られていた分野です。目新しさよりも、「この方向をさらに強める」という意思が読み取れます。
中小企業にも関係があるのは「不正計算」と「消費税」
租税回避や海外取引は、大企業の話に聞こえるかもしれません。ただ、最近は中小企業でも、海外の取引先や海外のネットサービスを使った売上が珍しくなくなりました。
それ以上に身近なのが、不正計算と消費税です。調査の現場でよく見てきたのは、悪意のある脱税よりも、次のようなケースでした。
- 現金で受け取った売上の一部が、帳簿に載っていない
- 実態のない外注先への支払いが、慣習として続いている
- 輸出や設備投資で消費税の還付を受けているのに、裏付けの書類が薄い
特に消費税の還付申告は、調査の対象として選ばれやすい傾向があります。還付を受けること自体は正当な権利ですが、取引の実態を示す契約書や輸出の証明などを、そろえておくことが大切です。
方針を知っておくことも、備えのひとつ
国税の方針は、公表される資料や報道からある程度読み取れます。「どこが見られやすいのか」を知っておくだけでも、日々の経理で気をつけるところははっきりします。
調査の通知が来てから慌てるのではなく、普段の帳簿づくりの段階で、調査官の目線を少し取り入れておく。私がご支援の中で大切にしているのは、そういう準備です。